ギャッベ絨毯
それはチームプレイの結晶


草木染の手織り絨毯アートギャッベ


草木で染められ、手織りで織りあげられるギャッベ絨毯。
それを聞くだけでも多くの手間と時間がかかっているのは誰もが想像できること。

そしてその2つの工程以外にもさまざまな人の手によって役割分担をされながらチームプレイで一枚の絨毯が作り上げられていきます。それぞれの工程でたくさんの職人さんと呼べる人々が携わっていきながら、遊牧民の生活道具であった素朴なギャッベを工芸品と呼べるアートにまで育て上げた、この現代のアートギャッベの作られる工程をみていきましょう。



アートギャッベ その代表的な10の工程

上質な羊毛のために、羊を大切に育てる


アートギャッベの羊はイランの高地で生活する上質な羊毛をもつ羊さんたち。その拠点は標高2,000mを超える山岳地帯のため、昼間と夜の寒暖差が20度以上の過酷な環境です。そのような場所でたくましく生活するからこそ、気温と湿度の変化に順応する羊毛となっていきます。その順応する力は平地で寒暖の差の少ない土地で暮らす羊さんとは大きく差がでます。寒暖差と湿度の差が激しい日本の暮らしでも快適に過ごすことができる絨毯の秘密は、このイランの大地と羊さんの頑張りにあるのです。上質な羊毛は上質な脂分を多く含みます。アートギャッベに使われる羊毛は毛の内部に脂分を多く含むため、絨毯として使う過程で水分や汚れも染みこみにくく、毛が切れにくく丈夫なギャッベとなります。



糸を手で一本一本紡いでいく

素朴で味わい深い絨毯アートギャッベに使われる上質な羊毛は手で一本一本紡がれていきます。これが絨毯を織る前の大きな手間のかかる工程です。一般的にギャッベの糸は現在では機械でつくられることも多いのですが、アートギャッベに使われる糸はこうして一本一本手作業によって紡がれた糸。だからこそ機械でつくる均一な太さの糸ではなく、一本一本手間と思いのこもった、個性のある糸に仕上がるのです。この太さの違う個性のある糸が、織りあがった後の素朴な表情の源でもあります。



自生する草木で糸をじっくりと染める

上質で脂分を多く含んだ羊毛に色を染めていきます。これがまた大変な工程。なぜなら脂分を多く含む羊毛はとても色が染まりにくいからです。だから一般的なギャッベに使われる羊毛は脂分をなるべく抜くことが多く、色を染まりやすくしています。しかし、そうしてしまうと肌触りはパサパサとし、汚れも付きやすく、糸も切れやすくなってしまいます。だからこそ、アートギャッベの羊毛は脂分を適度に残した状態でそめられていくのです。草木を粉末状にして煮込んだ窯に、できたての上質な羊毛の糸を入れていきます。脂分を含む糸を染めるには数時間、時には十数時間煮込んでいきながら、じっくりと糸の芯まで草木の色を染みこませ、染め上げていきます。
こうして染められた糸は、内部までしっかりと色が浸透しているため色褪せしにくい糸となります。


アートギャッベの色の素
茜の根=赤
クルミの皮=茶
ウコン=黄色
ザクロの皮=橙
ジャシール+インディゴ=緑


手織りで一本一本糸を織り込む

さぁ、いよいよ織り手の女性の出番です。アートギャッベを織る織り手の女性は、現地イランの織り手の方たちの中でも特に技術と感覚の優れた人たち。ある程度のたくさんの羊毛とラフ画をもとに、自分たちの家の軒先で織り機を置いて、家事や子育てをしながら暮らしの一部として絨毯を織りあげていきます。小さいサイズはひとりで、大きいサイズは2人や3人、時には4人の時も。数十日~数か月の時間がかかるので、織りあがった後には達成感でいっぱいになるのです。どんな一枚もその織り手の人たちにとってみれば『大作』と呼べるもの。だからこそ1枚に味わいや見どころがあるので、それを見る私たちも、じっくりとその1枚を味わいたいものです。



裏のちりちりとした毛を焼いてきれいにする

織り上げられたギャッベは工房へと集められ、絨毯として大切な仕上げの工程にはいります。まずは裏を焼く工程。これはインパクト大ですね!焼いちゃうんですか!?と良くお客様からびっくりされます。上質なウールは難燃性のため、焼いても燃え広がりにくい素材です。織ってそのままだと裏面にチリチリした毛がでてしまい、そのままだと使いにくい状態です。そのままにするギャッベもありますが、アートギャッベは見えないところのクォリティにもこだわっています。裏面を焼いてチリチリした毛を焦がし、洗うときれいになります。焼くことによって結び目が固くなり丈夫になる意味もあります。均等に加減よく焼くのも職人さんの技です。



毛足の長さを刈り揃え、柄を美しく魅せる

もともとギャッベは遊牧民がテント生活で地面に敷いて土足で使う絨毯。寒さをしのぐためにも毛足をとても長くして使っていました。しかし現代の暮らしで家の中で使うには、あまり毛足が長すぎると遊び毛という抜ける毛が多くなったり、重すぎてしまったり、使いづらくなることが多くなります。だからこそ、仕上げの工程ではこの刈りこみが行われます。これはバリカンで髪の毛を刈るよりもかなり難しい工程です。髪の毛ならミリ調節をして刈りこめばきれいにできますが、絨毯はそうはいきません。毛足がもともと長いものをその絨毯に合った適度な長さに合わせながら、力の加減を考えて刈りこんでいく。これぞ職人技です。一般的に織りの細かなギャッベは短めに、織りが少しざっくりめのギャッベは長め毛を残しながら刈りこんでいきます。でもそこはさすがイラン。日本のようにきっちりと決まりきったものではありません。細かいのにすごく毛足が長かったりするものもあって、手仕事の素朴さを感じられます。この工程はすごく難しいからこそ、きれいに刈り揃えられているものには賞賛を、そして少しデコボコしているものには大らかな気持ちで「あぁ手しごとだなぁ」と感じてあげてください。それくら難しい工程なのです。



ギャッベをきれいにし、遊び毛を少なくするために、鎌で力強く洗う

さぁいよいよ出来上がりが近づいてきました。ギャッベを洗う工程です。絨毯を洗うので、さぞかし優しく、デリケートに洗うのかなと思いきや、その真逆。使うのはまさに鎌と言っていい道具です。きれいにするだけならここまで強い道具で洗う必要なないかもしれませんが、洗うのと同時に、羊毛の手織り絨毯の特徴である遊び毛(抜ける毛)をなるべくここで押し出す役割があります。力をいれながら、ごしごしと石鹸水で豪快に洗っていきます。夏は良いですが、冬のこの水仕事は大変。いつもこの工程を見るたびに、お疲れ様です!と心の中で叫んでいます。洗う工程ではリンスによるトリートメントも行われます。髪の毛と一緒でただシャンプーやせっけんで洗っただけでは、ツヤや潤いは生まれません。繰り返し、時間をかけて丁寧に洗い、リンスによるトリートメントなど、丁寧な仕上げを行うからこそ、上質なツヤのある質感の絨毯に仕上がるのです。



強いイランの日差しのもとで、天日干しと丁寧なブラッシング


丁寧に洗い上げられたギャッベ絨毯を、イランの強い直射日光のもとで天日干しし、乾かしていきます。これも大切な工程です。髪の毛と一緒でしっかりと水分をとばして乾かし、ブラッシングをしなければ毛が固くなってしまいます。天日干しの工程は色を褪せにくくするのにも大きな役割を担っています。ご覧のようにイランの強い紫外線の日差しのもとで時間をかけて乾かしていきます。この過程で色が落ち着いた状態になるため、ここから私たちの暮らしで使う中では色が褪せにくくなるのです。そして丁寧なブラッシング。このブラッシングの工程を見ると、あぁいよいよだなぁと感慨深い気持ちになります。なんて言うと私たちが作っているみたいですが、アートギャッベを大切に紹介していく立場として、できあがりの工程を見ていくと、まるで自分ごとのようにものすごく大きな力の結集と達成感を受け取るような気持ちになるのです。



かたちを整え、ふちの仕上げや織りの最終チェックをする


ギャッベ絨毯の最後の仕上がりはこれぞ伝統工芸と言える細かな手仕事です。経糸のふさをきれいに巻き込み仕上げる。縁のかがりを行う。織りの細かな点をチェックする。など、非常に細かな根気のいる手仕事がなされます。アートギャッベは絨毯として実用的な側面とともに、アートとして、工芸品としての芸術性も大切なポイントとなります。だからこそ、この最後の仕上げに携わる人々の努力なくして、美しい作品は生まれないのです。



10 検品して日本へ出荷する

最後に忘れてはならない人々。それが私たちの選定をサポートしてくださる人たちです。たくさんのギャッベの中から、私たちがアートギャッベとして選定させて頂くのは数枚、時には数十枚に一枚。ギャッベとして長い時間をかけて織りあげられた一枚はどれも個性的で味のあるものばかり。だからノーと言うのは心苦しいのですが、日本の暮らしにマッチし、日本人の感覚に深く響くアートギャッベを紹介するために、厳選に厳選をかさねています。そんな「面倒くさいお客」と感じられてもおかしくない私たちをいつも快く、笑顔で迎えてくださり、重いギャッベを嫌な顔ひとつせずにめくって見せてくれる彼らの存在あってこそ、日本のお客さまにアートギャッベをご紹介することができています。


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