キリムはおしゃれなラグ・カーペット?素材や色の特徴など、キリムについて知っておきたいこと

投稿日: 2023年2月3日

ラグ・カーペットを探しているとよく目にする「キリム」。おしゃれなデザインのアイテムも多くて気になりますよね。中近東エリアの織物ということはなんとなくわかりますが、ペルシャ絨毯(じゅうたん)やギャッベとは何が違うのでしょうか? 今回は、キリムの特徴やほかの織物との違い、主なサイズなどについてご紹介します。


ヴィンテージラグ展


キリムは、ペルシャ絨毯やギャッベとは違う?

キリムの民族色あふれるデザインや風合いを見れば、古くから伝わってきた伝統的な織物であろうということは想像がつきます。まずは、キリムがどこの地域で、いつ頃から織られていた、どのような織物なのかを見ていきましょう。

ソファー前キリム
キリムアップ写真
キリム

キリムは平織りのラグ・カーペット

キリムは中近東のイラン・トルコ・アフガニスタンを主な産地とする、遊牧民によって織られてきた平織り(つづれ織り)の織り物です。日本では絨毯(じゅうたん)・ラグ・カーペットの一種と捉えられることも多いですが、現地では暮らしの道具として、物入れやカバー、食卓布、ブランケットなどの用途で作られてきました。


こちらの写真は遊牧民のテントの中です。左奥で、目隠しのように使われているものがキリムやジジムなどと呼ばれます。

キリムの歴史はとても古く、1500年以上にわたって織られてきたといいます。オスマントルコ最盛期には北アフリカのモロッコや東欧ウクライナ、ハンガリー、チェコスロバキアへ領土の広がりとともにキリムの織りの文化も広まりました。産地や部族それぞれの文様、織りの技法は母から娘へと代々受け継がれ、表現を深めていったのです。


こちらはローズキリムと呼ばれ、ブルガリアやルーマニア、モルドバ共和国などの東欧諸国で織られる華やかなキリムです。ほのかにヨーロッパの雰囲気があり、中東や北アフリカのエキゾチックなキリムとは一味違います。


キリムという名前自体はトルコがルーツですが、広い地域にわたって使われていることもあり、キリムの産地によってペルシャキリム(ギリムとも呼ばれる)、トルコキリムなどと呼び分けられることもあります。

ペルシャキリムは広い意味ではイランの名産である「ペルシャ絨毯」の一種にあたります。ただし、キリムのデザインや仕様などは、いわゆるペルシャ絨毯として一般的にイメージされるものや、同じくペルシャ絨毯の一種である「ギャッベ」とはまったく違っています。

ペルシャ絨毯やギャッベとは大きく違うキリムの特徴のひとつは、平織りのために毛足がなく、厚みが薄いことです。それもあって、床に敷くじゅうたんやラグとしての用途だけでなく、タペストリーやソファーカバーなど、比較的薄い布製品がよく使われるような用途も多くなっています。

小さいサイズはタペストリーにしてもおしゃれ。



キリム ソファー前に敷いた様子

オールドキリムは現在(ニューキリム)と織り方が違う希少品

キリムは1500年以上の歴史を持っていますが、昔と現在ではそれぞれ違う織り方で作られていることも特徴のひとつです。数十年~100年前に作られた「オールドキリム」は、基本的に手織りで、現在作られているニューキリムと織り方が違っていること、また希少であることから価値が高いとされています。オールドキリムは糸から手で紡ぎ、手織りで大変な手間をかけて作られていたのです。一方ニューキリムは機械織りが主流で、比較的入手しやすい品が多く見られます。

キリムとギャッベの違い

キリムとギャッベには、先に紹介した毛足や厚みといった特長だけでなく、織り方や素材、主流となっているサイズなど、さまざまな違いがあります。図案をベースにしながらも、織り手の感性を交えてに織る手法や、デザインには共通する部分も見られますが、素朴な雰囲気のデザインが多いギャッベに対して、キリムの方がよりハッキリとしたデザインが多いようです。詳しくは下記の記事も参考にしてみてください。

<関連記事>「ギャッベ」についてもっと知りたい!よい1枚を見分けるコツや選び方、お手入れ方法は?
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ヴィンテージラグ展


キリムの素材やデザインの特徴は?

キリムは織り方だけでなく、素材やデザインに関しても、近隣の地域に伝わっている織物類とは違う特徴を持っています。ここでは、素材・織り方・デザインに分けて、キリムの特徴を詳しく見ていきましょう。

キリムのイメージ

キリムに使われる素材

いわゆるペルシャ絨毯やギャッベの素材には主に羊毛が用いられますが、キリムには羊毛だけでなく、ヤギの毛やコットンなども使われています。移動を繰り返しながら暮らす遊牧民たちが、訪れた先々で手に入る素材を生かして織っていったものだからです。

遊牧地で育まれる羊毛は上質でなめらか





ちなみのこちらの写真のキリムは「ゴートキリム」と呼ばれ、ヤギの毛で作られています。トルコ南東部でつくられており、デザインもモダンで北欧スタイルにもしっくり合いそうです。

キリムの織り方

キリムはトルコの言葉で「平織物」の総称とされます。平織りは、経糸と横糸を交互にくぐらせます。さらに基本的なキリム織りでは、経糸が見えなくなるまで横糸を詰めていきます。ほかにもキリムの織り方は、平織りの中でも立体的な模様が出るジジム織りやズリ織り、斜めにも糸を折り込むスマック織りなど遊牧民ごとにさまざまなバリエーションが伝えられており、織り方によって模様などの特徴も違っています。

こちらが基本の織り方「平織り(つづれ織り)」です。経糸に緯糸を交互に通して上からギュッと詰めます。経糸は緯糸で完全に覆い隠されるため、表裏が同じ平らな布のような仕上がりになります。

キリムのデザイン

昔ながらのキリムは草木染めで染められていましたが、現在は化学染料で鮮やかな色をつけたキリムも多くなっています。先に紹介した通り、織り方などで模様やデザインも違ってきます。また、平織りの特徴として、裏表がなく、両面が同じデザインです。

ギャッベの織り手としても知られるイランの遊牧民カシュガイ族のキリムは、カラフルな多色使いの幾何学模様が特徴です。同じイラン北部のアゼルバイジャン地方ではシルクのキリムもよく織られていて、魚や動物、花模様のモチーフが見られます。現在のトルクメニスタンからウズベキスタンのエリアに暮らしていたトルクメン族のキリムには、部族や家の紋章、草花や動物などのモチーフが用いられています。シルジャン地方のキリムはとても細かく織られた連続柄が特徴で、これは極細の織り糸によって表現されています。

多色使いでカラフルなカシュガイ族のキリム



キリムの文様

キリムには様々な文様が織り込まれています。動物や自然をデフォルメした幾何学的なデザインが多く、子孫は繁栄や魔除けなどの意味を持っています。

【エリベリンデ】
地母神
女性もシンボル、豊穣、子孫繁栄

【ユルドゥズ】
八角星
幸運の象徴、豊穣、魔除け


【ミフラーブ】
ミフラーブ
イスラムの寺院(モスク)由来のアーチ型、礼拝用キリムのデザイン
凸模様をメッカの方向に向けて敷く


【ハヤットアージュ】
生命の樹
永遠の命、繁栄祈願

【メダリオン】
メダリオン
目を抽象化したダイヤ型や三角形、魔除けのモチーフ

【ボテ】
ボテ
古代ペルシャ由来のモチーフ
ペイズリーの原型ともいわれる

アートとしてのキリムの魅力

近年トライバルラグ(部族系絨毯)がインテリアとして注目を集め、雑誌の誌面や街中のカフェ、アパレル系のセレクトショップなどで目にする機会が増えてきました。

トライバルラグは主に毛足のある織物を指しますが「部族系」という意味では、もちろんキリムもそこに属します(様々な見解がありますので、参考程度に)。イランの遊牧民カシュガイ族(キリムの優秀な織り手でもあります)が伝統的に織り上げるギャッベも、トライバルラグの一つであり、その魅力は多くの方に周知されてきました。

【関連記事】オールドギャッベの魅力と時代背景
【公式サイト】アートギャッベ®

オールドギャッベ

永く時を刻んだオールドギャッベ(トライバルラグ)


ここからは個人的見解も入りますが・・・
キリムやトライバルラグの魅力は、遊牧民の暮らしの知恵から生まれたものであると同時に、その感性が反映されたアートでもある、というところだと思います。だからこそアートとしての存在感をもちながらも、生活道具としてインテリアに溶け込み、暮らしを豊かにしてくれるのだと思います。この素朴な「アート」がより多くの方に愛されることを、一ファンとして、願ってやみません。

鳥が描かれたトライバルラグ
玄関トライバルラグ

キリムやトライバルラグはインテリアを個性的に演出する



キリムの主なサイズは?

畳であれば1畳、2畳、寝具であればシングルサイズ、ダブルサイズと、床などに敷いて使うアイテムには、共通のサイズが設けられているものも少なくありません。キリムにも、同じように決まったサイズが何種類かあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

そもそもは決まったサイズがなかった

キリムは、枕や袋、礼拝用の敷物、ソファーカバーなど、その使い道も幅広かったことから、用途に合わせてさまざまなサイズが織られてきました。織り機の仕様によってサイズが決まっているギャッベのように、「一般的なサイズ」というものはなかったのです。その中でも、遊牧民が織るキリムは幅1m以下で作られてきましたが、それも幅は決まっているものの、長さは用途に応じてさまざまだといいます。

現在主流となっているキリムのサイズは?

もともと決まったサイズがないキリムとはいえ、主流となっているサイズはいくつかあります。現在よく見られるキリムのサイズをご紹介しましょう。

現在主流となっているサイズ(すべてcm)

・ヤストク(90×60前後)
ヤストク(ヤストック)とは「枕」、「クッション」という意味で、もともとは袋状になっていたといいます。遊牧民たちはヤストクサイズのキリムを、その名の通り枕やクッションとして使ったり、荷物を入れる袋として使ったりと、さまざまな用途に応用したのだそうです。現在は袋状になっていないものも多く、敷物やタペストリーなどとして使われています。

キリム
・セッジャーデ(170×110前後)
セッジャーデ(セッチャーデ、セジャーデ)はイスラム教における「礼拝用の敷物」という意味ですが、礼拝以外にもさまざまな用途に使われます。キリムの主な織り手である女性の手に合わせたとされ、キリムの中でも最もスタンダードなサイズで、多く織られていることから織り方やデザインのバリエーションもほかのサイズより豊富だといわれています。日本の住宅などでは、ラグとして使うのにもピッタリのサイズです。

・カルヨラ(220×150前後)
縦横は逆ですが、ダブルサイズベッド(140×195)より少し同じくらいの大きさで、遊牧民のテントの中で敷物に使われたり、荷物や家具などのカバーとして使われたりしたサイズです。日本でも同じように、ラグやソファーカバーなどに用いられていることが多いようです。


キリムのお手入れ

いざ使うとなると、気になるのが日頃のお手入れです。

・掃除機掛け
2,3日に1回を目安に掃除機掛けをします。ヘッドのブラシが高速回転する掃除機などはキリムを傷つける恐れがあります。ブラシの回転を止めるか、ブラシのないタイプのヘッドに交換して使用しましょう。

・陰干し
ウールの敷物は乾燥した状態を好みます。カラッと晴れた湿度の低い日に陰干しして風に当てましょう。直射日光が当たる場合は短時間で済ませるようにしましょう。紫外線は色褪せの原因になります。

弊社で取り扱うヴィンテージキリムは自社又は現地で全品洗浄済みです。キリムは遊牧民の生活道具として、乾燥地帯の大地で様々な用途で使用されていたものがほとんどです。使っていくうちに、ホコリや生活臭が気になることもあるかもしれません。それすらも生活の知恵から生まれたキリムの魅了の一つではあるのですが「どうしても気になる」という方もいらっしゃると思います。弊社ではグループ会社として、ウール絨毯を専門にクリーニングする部門がありますので、お気軽にご相談ください。

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まとめ

重厚なイメージが強い中近東のカーペットですが、その中でもキリムは毛足がなく厚みも薄いことから、よりさまざまな用途に用いられています。広い地域で織られているためデザインも地域によって多種多彩で、サイズも小さいものから大きなものまであるのが特徴です。そのため、現代のインテリアにも合わせやすい、フレキシブルなアイテムといえるでしょう。部屋の雰囲気を変えたい方には、おすすめです。







 
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