ギャッベの織り手の話-1 背景編

投稿日: 2020年5月16日

こんにちは。

一部地域では新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う非常事態/緊急事態宣言の一部解除が見られるようになってきました。
私たちが提携する全国のアートギャッベ取り扱いショップ様からも、あちらこちらの動向が聞こえて参ります。
少しでも早く、皆様にふだん通りの暮らしが戻ってくることを願ってやみません。

さて、アートギャッベの故郷 イランでも感染拡大がまだ見られるようです。
買付に伴う渡航についても、現在は未定の状況が続いております。

ただ伝え聞く話では、人口が集中する首都 テヘラン以外ではその限りではないようで、
特にギャッベの織り手であるカシュガイ族たちの住む南西部では、あまり影響がないようです。

彼の国おいてもこ事態の収束が望まれます。

今日はそんなギャッベの織り手さんたちのことについてお話しします。

おり子さんこと、カシュガイ民族の女性たち
※この記事を執筆するにあたり、単に織子さんたちの服装の話のみをする予定だったのですが前置きが長くなってしまい、
本日はその前置きを第一弾として、勝手にシリーズ化させていただきます(笑)
ギャッベのこと、つくり手のことに少しでも興味を持って頂けると幸いです。

織るのは女性たち

これは過去何度もお話ししていることですが、アートギャッベの場合はイラン南西部に住む遊牧民をルーツにもつ「カシュガイ」の、その女性たちに今でも織ってもらっています。

並ぶ織子さん
今でも、というのは、理由があります。現在、日本含む世界中に流通するギャッベですが、カシュガイの手によらないものも多くあります。
主にアジアの方で工場などにより大量生産されるものがそれにあたります。
また、イラン国内でも、職人と呼ばれる男性たちの手によりつくられることもあります。

一般に工場などで大量生産を行うとコストが下がりますので、安く市場に流通させることができます。
イラン産以外と言われるものや、比較的お求めやすい価格のギャッベにはこのあたりの理由も大きく影響します。

つまりカシュガイの女性たちの手だとそんなにコストが下げられないということです。

ギャッベの糸をつむぐ
実際にカシュガイを含む女性たちの手織り絨毯の織り技術・技法は、ユネスコの世界無形文化遺産にも指定されています。

それに、彼女たちは遊牧地のテントないしは定住地の自宅、自分たちの家でしか基本的にギャッベを織りません。

ギャッベの織子さん
家事・子育ての合間につくる、という女性特有の事情もありそうですね。
そんなわけで生産効率としては決して高くありません。
それはそうですよね、ちょうどタイムリーな話で、お子さんを育てながらのテレワークは大変、ということがよくニュースなどで言われていますよね(笑)

今でこそ「遠く日本で使ってくれるのかも」なんてことをもしかしたら織子さんも想像しなが織っているかもしれません。
でも もともとは家財道具として、ベッドや床の代わりとして使うために作られるものです。
仕事、というよりは、家事の延長線上という感覚も強いのかもしれません。

また、「嫁入り道具としてギャッベを2,3枚織って持参する」という風習が部族ではながらく守られてきました。
いいギャッベをもって嫁ぐかどうかは、一大事です。
家計を助ける事ができるのかどうか、そして、しっかり躾や教育を受けているのかどうか、それを判断する基準となるからです。

なぜならばカシュガイにおいてギャッベは女性だけが織るもの、となると、やはり母親が娘に教えることになります。

母も娘も一所懸命やるんだと思うんですよね。いいお嫁さんと思ってほしいですから。

遊牧民がルーツの部族なので、教育・躾は絨毯織を教えることがメインになります。
日本で言えばお母さんが子供の宿題を見てあげたり、お手伝いを通じてお料理の仕方を教えるような感じでしょうか。

そこに織り込まれるのは、思いをこめた文様や意匠。
身近にある風景や自然に、あこがれをこめて織る。



このあたりはこの記事にも詳しいです

https://artgabbeh.com/blog/orikosan-jiyuu/
https://artgabbeh.com/blog/gabbeh-design-20200424/

さてここで付け加えておくと、提携している工房(糸の染色や製作管理を担当)の方の協力により、
私たちがアートギャッベとして扱う品質の高いものをつくる織子さんについては、十分に報酬を与えてくれているようです。
(そこも価格の秘訣かもしれません。。。)

ゾランバリさん
かつては絨毯織については子供にも作らせているとか、安すぎる賃金で作らせていたとかそんなよくない歴史もありました。

しかしギャッベの場合は家財道具だったという成り立ちと、商用品となったのは1970年代頃と遅かった歴史、
サポートする工房の尽力というところでそうではないと言えます。

最近よく、アパレルなどの製造業の現場では「エシカル」とか「サステナビリティ」であるかどうか、という点は注目されますよね。
不当な行いや、あるいは誰かが買いたたかれていないか、地球環境に鑑みて持続可能なものなのか。
素材は言うまでもなく羊毛に草木染め天然素材ですしね。そう考えるとこれ以上のものもそうなさそうな感じがしません
か?(笑)

アートギャッベの糸を紡ぐカシュガイの女性
さて、織子さんの現在を取り巻く環境はこんな感じ。次回はもう少し暮らしに踏み込んでみたいと思います。

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